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Home >> author >> ayatsuji >> ayatsujibooks

2008年06月19日(Thu) 15:41

殺人鬼

夏期合宿のため双葉山を訪れた親睦団体「TCメンバーズ」の一行。
人里離れた山中での楽しいサマーキャンプは、突如出現した殺人鬼によって、阿鼻叫喚の地獄と化した。
次々と殺されてゆく仲間たち…手足が切断され、眼球が抉りだされ、生首は宙を舞う。血塗れの殺戮はいつまで続くのか。殺人鬼の正体は。
驚愕の大トリックが仕掛けられた、史上初の新本格スプラッタ・ホラー。

気分の悪くなるシーンが間断なく襲いかかってきます。
「心臓の弱い方はご遠慮ください」とはよくある常套句だけれども、本書に関しては不可欠でしょう。
私は文章での残酷描写は全くこたえない奴なのですが、それでもなかなかしんどかった。B級ホラーが好きな人には楽しめると思います。
ストイックな描写は想像をかきたて、これ以上ないくらいにグロテスクです。しかし、単なるスプラッタでは終わらないのが綾辻行人ならでは。

「彼」は名もなく、素性も容姿も不確か。
いっぽう、犠牲者はキャンプに参加するまでの事情が綴られ、一人ひとり「個人」が明確にされていきます。感情を有しない「彼」は犠牲者の苦悶を目にして微妙に反応するものの、無慈悲そのもの。

「人生」とは何なのか。不条理そのものの「彼」とは何者なのか?

例えれば大事故、大災害の現場に足を踏み入れたときのやりきれなさ。人間を超えた存在との満たされることのない問答。

ハラハラさせられるシーンがたくさんあり、気がつくと話に引き込まれている。
この作品にもちゃんと推理小説的な仕掛けが施されています。
真相が解明された後に読み返してみると、いかにいい加減に読んでいたかということに気づかされ、唖然とします。
綾辻作品を語る時によく使われる「それまで親しんでいた世界が一瞬にしてその姿を一変させる」という特質はこの作品にも見事に表れています。