2007年10月07日(Sun) 16:23
庄内柿と庄内美人 -1
此辺で柿といえばもちろん庄内柿である。もう今はそれしかないという調子。平核無(ひらたねなし)柿とも称してタネのないのがミソだが… いわゆる受精能力がないわけで、その点欠陥品であろう。
しかし人間の側にたてばタネなしは食べやすいわけで、しかも美味となれば欠陥品どころかエリート。
とにかく今日の庄内柿になるまで随分改良を加えて商品価値を高めてきたようで、整然と管理された柿畑をよく見かける。
羽黒の松ヶ丘などがその例だが、柿の木がみな一様に床屋に行ってきたように、きちんと整枝剪定されている風景は見事。
そして収穫された柿一粒一粒の端正な姿には、農民の丹精を感じる。
四角型のつややかな色あい。そしてその果肉はみずみずしく品性ある果実といおうか。
ダダチャ豆と民田茄子(みんでんなす)と、この庄内柿を庄内畑作の三大芸術品と称してはオーバーか。
柿は香りもなければ酸味もない甘味だけといわれるが、庄内柿はその淡泊ともいえる甘味が歯ざわり舌ざわりと相俟って、さわやかであり又したたかでもある。
最初の頃、庄内柿はあまり人気がなかったらしい。そのひとつに渋抜きがうまくいかなかったことがあげられている。
小学生の頃、わが家にデンクロー柿があった。この柿は湯ざわしで簡単に渋が抜け、タネは多いが甘い。庄内柿を白砂糖とすれば、黒砂糖というところか。
当時柿買い業者はデンクロー柿の方を値段よく買っていたようだった。
戦後気がついたらわが家のデンクロー柿は消え、庄内柿だけになった。今でもデンクロー柿を好む人もいるようだが。
子供の頃の鳥居町の各屋敷内には、柿の一、二本は必ずあった。庄内柿の発祥地が鳥居町ということとは関係あるまいが、秋になるとたわわな実りを競った。甘柿もあった。
いや柿だけとは限らない。梅も大抵あった。あとはアンズ、ザクロ、イチジク、梨など。向いの家には栗の木もあり、花咲く頃には独特の匂いが一面にただよった。
子供達は誰の家に何があって何時食べ頃かよく知っていた。学校から帰るとガキ大将を先頭に、
「今日はBちゃんのところに行こう」
木に登りながらアンズを採って齧りつく。その下で女の子などは桑の実で唇をブシ色(むらさき色)に染める。
無断であるが必要以上は採らない。各家庭でもおやつ代りと黙認の体(てい)である。
ひと区切りつくと生垣をもぐり、笹やぶを漕いで行動開始。各屋敷から屋敷へと縦横無尽に駆けまわり探検?自然の色々を発見し、下手な名所めぐりより興味津々。その自然や建物を利用して隠れん坊に兵隊ごっこ。
或時など便所の小窓がカラリと開いて
「こらーッ」
びっくりして見るとBちゃんの姉さん。大か小か知らんが用を足して立ちあがり、ズロースを引きあげながらのようで、此方を向いて笑っている。鶴岡女学校の生徒。美人である。
庄内柿と庄内美人はどこか似ている?
