2007年02月03日(Sat) 18:41
やきとり屋ものがたり(13)-5
結婚のためつれ戻されないうちにと、伯父に味方になってもらい、こっそり名古屋の伯母の所に走った。母には捜さないでくれと置手紙をして。十七、八の頃だったろうか。名古屋で仕事を探して働いたがきつかった。脚気になったりした。一年余り経って義兄が同じ集落の女と結婚したと知ってそれを機会に帰った。しかし家にいるつもりはなかった。いられるわけもなかった。身体の調子が今ひとつだったが鶴岡に出て働いた。
母は相変らず黙っていた。そしてやはり自分の旦那である親方に何かおどおどしていた。
その母も、もういない。最後の頃はぼけた。それが何とも悲しくぼけたという感じだった。
ただ黙っている母にはよく反発を感じたが、むしろ黙っていることによってあたしの我がままを許していたのではなかったか、そしてその分自分で周囲に耐えていたのではなかったかと後になって思った。
さすがにあたしが結婚するときだけは好い顔をしなかった。子供のいるところに母と同じように後妻に入るのだから。それも初婚で。
まあいろいろあった。結構意地を張り、自分を通してきたような気がする。まあその分ツケも背負ったみたいだが……
やきとり屋を今まで三十七年、何とか五人の子供を育て、一家食いつないできた。
たかがやきとり屋でだ。
そして結局手元に残ったのは、その男から借りた、いや貰った五千円で出した屋台だけということになるか。帳尻は合っているようだ。リッパ、リッパ。
おわり
